ジョー・アン・カリスは、家庭内に存在する日常的なオブジェクトを主題とし、それらをユーモラスかつ不穏な構図で再構成することにより、身近な空間に潜む感情の複雑な相貌を顕在化させてきた。
1970年代後半に台頭した「捏造写真(Fabricated Photography)」のムーブメントにおける先駆的存在として、カリスは写真というメディアの記録性に意図的な演出を加えることで、見る者を虚構性への参与へと誘導し、視覚芸術における「真実性」の概念に批評的視点を投げかけている。
本書は、カリスの初期アーカイブに立ち戻り、1970年代後半の代表的なカラー写真作品と、1980年代に展開されたモノクロームによる「グリッド」形式の静物画シリーズとを交差させながら、彼女の創作活動の連続性および主題的深化を再検証する試みである。
随所に挿入されたゲートフォールド(折込ページ)により、ページ構成そのものが視覚的な演出装置として機能し、本書の叙述は単なる資料集を超えて、視覚的かつ空間的に構築された物語として提示されている。これにより読者は、家庭という閉鎖的な空間に内在する心理的緊張や文化的制度への問いに、あらためて向き合うこととなるだろう。
Luhz Press / 110ページ / ハードカバー / 200 x 160 mm / 9798991412810 / 2025年
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