ベルギーのアーティストジム・カンパース(Jim Campers)の写真スタイルは多様で、科学的なイラストや旅行記のようなイメージもあれば、広告や視覚実験を思わせるものもある。彼は、被写体を選択するに当たって、アンダーグラウンドの文献やオンラインのブログなどを調べながら、専門性の高いテーマに没頭してきた。
本書は彼の2つの新しい写真シリーズ*を統合したものである。これらの作品は、ノスタルジアと空想上のユートピアとの交差点に位置している。
二つのシリーズは人類の未来を示唆するタイトル「Forward Escape into the Past(過去への前進逃避)」で結び付けられていることに加え、社会からの離脱、自然と調和した生活、1960年代から1970年代のカウンターカルチャーというテーマに通じている。過去と自然との繋がりを求める、テクノロジーの進歩から遠く離れてしまった未来の人類についての作家の考察を提示する作品となっている。
この作品集はベルギーとオランダで開催された展覧会に合わせて刊行されたもので、作家にとっては初めてのアーティストブック。
*一つ目のシリーズ「Let's Kill the Moonlight」はアメリカの数学者でテロリストセオドア・カジンスキーの有罪判決に由来する。FBIのコードネームから「ユナボマー」と呼ばれたカシンスキーは、1970年以降、科学技術の絶え間ない進歩に対する批判を展開し、自然と調和した自由の回復を唱えた。
二つ目のシリーズ「Intranaut」はアメリカの作家・哲学者・人類学者であるテレンス・マッケナの理論を参考にしている。マッケナは「Stoned Ape仮説」を提唱し、標準的な進化論で説明されているプロセスを修正し、先史時代の人類によるサイケデリック・マッシュルーム「ミナミシビレタケ(Psylocybin cubensis)」の摂取が重要な役割を果たしたと主張した人物である。
Art Paper Editions / 172ページ / ソフトカバー / 290 x 240 mm / 9789490800833 / 2018年