






アメリカ人アーティスト、アル・テイラーの作品集。1985年に制作を開始した立体作品の方が広く知られているが、彼の構築物は「彫刻的な関心事では全くなく、(彼らは)より平坦な伝統の集合から生まれてきた」と主張している。キャンバス、ドローイング、版画、彫刻のいずれにおいても、テイラーの創作活動は、基本的に絵画の形式的な関心事に根ざしていた。
2017年春にニューヨークのデイヴィッド・ズウィナーで開催された展覧会に際して刊行された本書は、彼のキャンバス上の作品にのみ焦点を当てた初の書籍で、1971年から1980年の間に制作された、ほとんど見ることのできない絵画のセレクションを収録している。詩人で美術評論家のジョン・ヤウによる新たな学術的考察により、テイラーの絵画、ドローイング、彫刻的オブジェをつなぐ視覚的関係性を検証するとともに、1970年代のニューヨークの美術界について考察している。また、生前のテイラーをよく知る著名な画家スタンリー・ホイットニーとビリー・サリバンがミミ・トンプソンに行った対話から、「アーティストのアーティスト」と呼ばれたテイラーについての考察がなされている。このカタログの中心となる26点の絵画は、縮小と抑制の繊細さを体現しながらも、後のテイラー作品を特徴づけることになる特異な遊び心が見え隠れしている。あるキャンバスでは、壁を取り込んだ形のコンポジションで空間的なパースペクティブを表現し、しばしば単一色が支配的となり、またあるキャンバスでは、色の並置と滑らかな塗りの相互作用がキャンバスに活力を与える。絵画的でありながら彫刻的でもあるこれらの作品は、抽象画の常識を逸脱し、空間や知覚に独自に働きかけ、叙情的なリズムを有している。この新しい出版物は、アル・テイラーの絵画の重要性を、彼自身の実践と20世紀の抽象画の文脈の両方で明らかにし、検証する一冊。
David Zwirner Books / 96ページ / ハードカバー / 292 x 229 mm / 9781941701584 / 2017年