ピエト・モンドリアン(1872-1944)の一般的なイメージは、スーツにネクタイを締め、控えめで飄々とした態度の真面目な男性である。このイメージは、10枚ほどの小さな写真群によって形成されたものだが、画家とそのアトリエを写した約400枚の写真を見ると、本当のモンドリアンを生き生きとした姿で映し出している。
本書は伝記ではなく、むしろモンドリアンの人生を視覚的に説明するもので、この最も象徴的な近代芸術家の世界を鮮やかに呼び起こすものといえる。アムステルダム、パリ、ニューヨークのモンドリアンのアトリエは、芸術作品そのものであり、そこに訪れるゲストも魅力的だったことが、ここに再現された記録写真から見て取れる。また、旅先や訪問先で撮影されたモンドリアンの日常を示すスナップショット、オープニングやディナーの写真、真面目で妥協のない芸術家というイメージをアピールするために使われたフォーマルなポートレートも収録。また詳細なキャプションと、作品の文脈における写真の意義に関する豊富な図版、エッセイにより、モンドリアンの時代の特別な記録となっている。
Hatje Cantz / 368ページ / ハードカバー / 270 x 240 mm / 9783775754002 / 2023年