オランダ人写真家ヘンク・ウィルトシュートは、2005年にヨーロッパの不法移民問題を主題とした長期的なドキュメンタリープロジェクトを開始して以来、一貫して社会の周縁に生きる人々や、見過ごされがちな現代的課題に焦点を当ててきた。
その成果は、写真集『Shelter』(2011年)、『Ville de Calais』(2017年)、『Rooted』(2019年)といった出版物に結実している。
さらに2021年には、オランダ国内におけるCovid-19パンデミックの社会的影響を記録した『Distance』を発表し、日常生活の変容を鋭く捉えた。
近年のプロジェクト『Territorium』では、ウィルトシュートは農業従事者と自然保護主義者の対立を通して、現代オランダ社会における「自然」の概念とその政治性を問い直す。
かつて彼自身が自然の安らぎを享受した故郷ハーダーヴァイク周辺が、今や文化的・生態的な衝突の現場と化している現実に直面しながら、彼はその複雑な構図を印象的な映像表現と写真記録によって可視化している。
本書は、『Territorium』におけるウィルトシュートの実践を記録・考察するものであり、ロッテルダムで開催された展覧会およびビデオインスタレーションと連動する形で編集された。
オランダ語のみで構成されている本書は、単なる写真集を超え、映像、言語、環境、社会が交錯する記録媒体として機能する。農業と自然保護をめぐる対立を、視覚的かつ概念的に捉え直すための貴重な資料である。
オランダ語のみ。
Henk Wildschut / 296ページ / ソフトカバー / 260 x 200 mm / 9789082588538 / 2025年