ノルウェー出身の写真家、マルタ・オースの新作となる本書では、写真の向きが意図的に固定されず、天地が操作された状態で配置されている。彼は、さまざまな風景を描いた一連の写真において、重力を停止させ、世界を見るための「流動的な視点」の発見を試みている。
本来の固定された視点から解放されることで、自然物はより剥き出しの輪郭を帯び、一方で人工物は重力を失うことで、かえって自然の力によって固定されているかのような、不思議な実在感を放っている。私たちが普段、いかに脳内で「上下」や「用途」を補完しながら世界を見ているかを、強く意識させる一冊。
スマホの画面によって視覚体験が画一化されがちな現代において、自分がいかにして独自の視座を持つべきか。その自由さと可能性を感じさせてくれる一冊。
Multipress / 80ページ / ソフトカバー / 290 × 210 mm / 9788292224694 / 2025年