ヴァナキュラーとは「土着の」「その土地固有の」「日常的な話し言葉の」という意味を持つ単語だが、それが芸術的な分野、とりわけ写真の文脈の中で使用される場合には「芸術的・歴史的ではなく日常にありふれた」というような意味を持つ。戦後に欧米で発展した写真の歴史は、作家の表現やその技術の発展の歴史として語られてきた。しかしその流れの中で周縁に位置している匿名性を持った、美術的価値が低いと考えられている写真を「ヴァナキュラー写真」と呼ぶ。
本書は美的目的とは対照的に、個人的な記録や商業的な利用のために撮影された実用的な写真をまとめたアーカイブとなっている。写真の歴史に関する研究者とのコラボレーションにより、写真史、ジェンダー、クィア理論、アフリカ研究、キュレーターとしての実践などに関するイメージのケーススタディを行なっている。
カリフォルニアの移民労働者の身分証明写真やクィアコミュニティで流通していた体格を写した写真、また軍人の記念アルバムなどの素材や社会的用途、共有されたコミュニティを説明することによって、私たちの政治的所属、主体性、日常的な出来事との関係で写真を考える新しい方法を提供している。
これまで見過ごされてきた写真の実践を複数の文脈と意味で再考する画期的な取り組みとなっている。
Steidl / 431ページ / ソフトカバー / 245 x 170 mm / 9783958296275 / 2020年
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