日本人建築家、写真家である平林大輔の作品集。建築家が去ったのちにほとんど注目されなくなる建築物の一生に向けた黙想である。
鑑賞者に親密さを感じさせ、かつ没入させるイメージのシークエンスを通して、いまや世に名の知れたスイスのバーゼル出身建築家ユニット、「ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron / HdM)」が初期にデザインした、同じくスイス、バーゼルに建つ個人住宅「ケックラン・ハウス(Koechlin House)」を探索する。
作者の写真は家を日常生活の場であり、小さな喜びや驚き、厄介な不運、儀式的な習慣、意外性に満ちた存在として描いている。元の持ち主がこの住宅を手放してからはすでに久しく、現在の家主の無計画かつ調和の取れた暮らしを静かに見つめている。
「ケックラン・ハウス」は室内での過ごし方を外の見た目よりも重要視する「裏返し(inside out’)」の設計が施されている。そうした意味で作者は建物の精神に基づいており、内部での具体的な経験に焦点をおき、多くの建築関係の記録において用いられるような全知全能的かつ非人間的な視点を持たない。
建築家であり作家のエレナ・エール(Ellena Ehrl)とティボール・ビーリキー(Tibor Bielicky)のテキストと共に、我々が「建築的」とみなしている視点やディテールを再考させ、建築物の長くも多様な物語に満ちたその生涯について、新たに気づかせてくれるイメージ群を収録した一冊である。
MACK / 128ページ / ソフトカバー / 320 x 240 mm / 9781915743176 / 2023年
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