イザベル・ヴェンツェル(1982年生まれ、ドイツ出身)は、写真家・アーティストでありながら、アクロバティックな一面も持っており、カメラの前に自分の体を置いて撮影する作品で知られている。セルフタイマーが許す数秒の間、困難な体制をとり、シャッターが押されるまでその状態を維持するという制作過程では、人間そのものではなく、物理的な形態としての身体を作品の中に捉えようとする試みが見られる。
本書に収録されているシリーズ「Counting Till Ten」でも、タイトル(10まで数える)がセルフタイマーを示すようなものであったり、間違って起こることも作品として残るなど、即興が制作プロセスの重要な要素となっている。写真家とモデルが一体となり、自身の体、重力、環境でイメージを彫刻したような作品を通し、カメラの役割と(女性の)身体の役割に疑問を投げかける。身体を持つ存在として生きることについて問いかけるような、作家の遊び心がたくさん見られる作品群。
Art Paper Editions / 176ページ / ハードカバー / 260 x 190 mm / 978949314657 / 2020年