極めて日常的かつ私的な営みをベースに、写真や言葉を通じた物語性の高い作品を制作するコンセプチュアル・アーティストのソフィ・カルは、物語というものは、シャッターを切る前やアイディアが思い浮かんだときのひらめきに先行するものだと考える。
「Parce que」(日本語で「なぜなら」)と名付けられた本作の実物は、額の表面に黒い布が覆いかぶさり、その表面には「なぜなら」に相当するフレーズから始まる一節が白い糸で刺繍されている。
何が彼女にシャッターを押させたのか?
作家からその理由を明かされた鑑賞者は、自らの意思でカーテンをめくり上げ、ようやく写真イメージと対峙することになる。
本書においても、この順序は忠実に踏襲されている。
すなわち、理由が先に提示され、そのあとに和綴じした本の隙間に隠れているシートを取り出せばその写真を見ることができるのだ。
彼女はこのようにして、イメージとそれに付随する言葉との間にある自然な優位関係を逆転させ、観る者がその後に写真から受け取る影響に注意を喚起する。
英語版による再版。
Éditions Xavier Barral / 72ページ / ハードカバー / 250 x 180mm / 9782365112352 / 2019年
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